プラトニック ラブ
伝えられない行先
セイは冴木が運転する車の後部座席に乗車して、空港を後にした。
車内の窓ガラスは結露して外の様子は伺えない。
セイは高校生の時から1LDKのマンションに一人暮らしをしていたが、留学と共にマンションは引き払っていた。
だから、単純に新居に向かってるかと思った。
「冴木さん、これから何処へ行くの?俺の新居とか?」
「……いいえ。行き先は新居じゃないの」
「じゃあ、ホテル?」
冴木は背中を向けたまま首を横に振る。
「それじゃあ…」
冴木の背中を見て答える気がないと悟ると、セイの口は自然と閉ざされた。
カーナビに目的地はセットされていない。
彼女は道路標識を頼りに車を走らせている。
空港からの道を走り慣れてる訳じゃない。
ただ、彼女に何か考えがある事だけは薄々感じていた。