プラトニック ラブ
小さな歪み
マネージャー
養護教諭から電話連絡を受けたセイが保健室を出てから、およそ3分後。
紗南は時間差で保健室を出た。
すると、扉の向こうには成人女性が一人。
サラサラのボブヘアーで黒いパンツスーツ姿。
年齢は20代後半くらい。
身長は160センチ前後で細身の体。
彼女は俯いたまま腕組みをして壁にもたれかかっている。
紗南は自分が知らない女性だったので、気にも止めず彼女の前を通過した。
ところが、3歩先を進んだ辺りで彼女は口を開いた。
「あなた……、福嶋 紗南さん?」
「えっ、そう…です……けど」
紗南は女性の方へと振り返る。
目が合うと、紗南は冷たい雰囲気にブルっと身震いがした。
しかし、その嫌な予感は見事に的中する。
「私は風波エンターテイメントの、冴木 美波と申します」
女性は紗南に近付き、黒いビジネスバッグから名刺ケースを取り出して名刺を手にし、両手に持ち替えて差し出した。
紗南は名刺を受け取り目を通すと、女性はセイが所属している芸能事務所の者だと知る。