プラトニック ラブ
過去の苦しみ
「結局、2人の恋は静かに幕を閉じたわ。当時の私はは新任だった上に衝撃的な事件だったから、あの時の事は今も鮮明に覚えてる」
養護教諭が話を終えると、紗南は自分と冴木の過去を照らし合わせた。
普通科に在籍していた事。
芸能科に彼氏がいた事。
立場は違うが、侵入騒動に関わった事。
そして、最後は離れ離れになってしまった事。
確かに養護教諭が言う通り、彼女とは境遇がよく似ている。
「…でも、彼との間に辛い過去があったのにも関わらず、どうしてマネージャー業の道を選んだんだろう。芸能界から離れたいと思わなかったんですかね」
「芸能界に纏わる仕事に就いたのは、別れた彼を探そうとしたんじゃないかな。退学と同時に彼が失踪してしまったから」
「彼が…失踪………?」
「当時、2人の熱愛が紙面を飾ったの。彼女は一般人だから名前は伏せられていたけど、彼は逃げようがなかった。新人俳優として周りから期待を背負っていただけに、マスコミや身内からの攻撃が苦しかったのかもしれないね」
「そうだったんですか……。可哀想に」
冷酷な仮面に隠されていた辛い過去。
大事な人を失った彼女の苦しみが、私に宛てた過去の言葉の中からビシビシと伝わってくる。