プラトニック ラブ
親友 菜乃花
秘密の恋を応援してくれる菜乃花
ーー同日の昼休み。
紗南の親友である同じクラスの菜乃花は、お弁当袋を持ち紗南の机の前の空席の椅子を後方へくるりと回転させて、ドカッと腰を落とした。
「ねぇねぇ!さっき、保健室で例の彼氏と会えたの?」
菜乃花はニヤケ顔を近づけ、お弁当袋の紐をスルリと解く。
紗南は机の横のフックにかけているカバンを膝に置き、中のお弁当袋を取り出した。
「あ…うん。少しだけね」
「超絶羨ましい〜〜っ!彼氏の名前を言えないのは残念だけど、まさかあの人が紗南の彼氏だなんてね」
「シーっ。ちょっと声が大きい」
菜乃花はセイとの恋愛をクラス中にバラしてしまいそうな勢いで声を大にして語る。
紗南は慌てて口元に人差し指を当てて周囲を軽く見回す。
「心配性なんだから。彼氏の名前を口にしてないから大丈夫だって」
「それでも、ダメ!秘密の恋愛が世間にバレたら大ごとになっちゃう。だから、絶対に内緒!」
一際テンションが高い菜乃花は、前髪厚めのストレートでミディアムヘア。
彼女は芸能界に無関心な自分とは対照的で超がつくほどミーハー。
芸能人に会う目的で猛勉し、念願の本校に入学。
いま以上の目標がない彼女の将来の夢は、未だに白紙だとか。
家業の病院を継ぐ為に医師を目指している自分からすると、自由奔放な彼女が羨ましく思う。
医師を目指すのは本望ではないのだから。
彼女は同校に在学してると噂されている《Beans》という5人組歌手グループのリーダー ハルくんの熱狂的なファン。
授業の合間の休み時間の度に教室の窓から顔を突き出し、西校舎にいると思われるハルくんの行方を探している。
空想や夢では何度も親密にお会いしてるようだが、残念な事に校内では一度もお見かけした事はない。