国の再建のために捨てられたもと皇太子妃ですが強く生きています


「よかったですわ。陛下」

相当楽しかったらしい。
アドルフにとっては、ありえない恋愛物語みたいなものだから退屈で仕方なかったのだが、こういうのが好きなのか?オリヴィアは。

「そうか。よかった。では、また他の観劇も手配しよう」

「本当ですか?うれしい」

めずらしく顔を輝かせているのが観劇のせいで、自分ではないと思うとめげそうになるがそれでも自分が連れて行ったところで喜んでくれているのは嬉しかった。

観劇の間、となりに座っているオリヴィアの手を握りたくてうずうずしていたが、握れば嫌がられることは眼に見えていて、せっかく一緒にこれたのにそれだけは避けたくて、必死で耐えていた。

オリヴィアは途中で感情移入したのかぽろぽろと泣き始め、アドルフはぎょっとしたのだが、観劇が終わることにはけろっとしていて再びびっくりした。

女性の感情の変化というのはよくわからない。

いずれにしてもこれからは時々こうやって2人で出かけられると思うと、心の奥でにんまりするアドルフだったのだ。
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