国の再建のために捨てられたもと皇太子妃ですが強く生きています
「キャンゼル伯爵夫人。その髪飾り。とても斬新ですわね」

どこから話をしようかと思っていたが、どうしたらいいか思いつかず、とりあえず容姿をほめることにした。

「まぁ。殿下からお声をいただくなんて」

恐縮し頭を下げているが、この夫人、職業女性たちをまとめる、総元締めギルドをつくっている女性だ。
平民でありながら、伯爵である年老いた夫と結婚し、夫の死後その財産を手に、次々と女性たちを派遣する仕事をしはじめ事業を広げている。

カルトナーの発展にはかかすことのできない女性だった。
これからは女性も職を持つ人が増えるだろうし、社会を支えていくのは女性だろうとオリヴィアは考えている。

「わたしは皇后ではありません、単なる代理です。けれど、カルトナーをこれから先動かすのは女性だと思っています。一度話をしませんか?」

こういう女性にはストレートに言ったほうがいいと思ったのだ。

「殿下」

キャンゼル伯爵夫人はじっとオリヴィアを観察するように見ていたが、コクリとうなづいた。

「そうですわね。一度じっくりお話させていただきたいですわ」

「ええ。ではお茶にご招待いたしますわ。個人的に」

「はい」

よし、これで今日の仕事は終わり。
あとは適当に歓談しておけばいいわ。
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