国の再建のために捨てられたもと皇太子妃ですが強く生きています
「ア、アドルフ皇帝陛下」

キーン伯爵令息はさすがに驚いたようでオリヴィアの手首から手を離した。

「お前。誰に何をしたかわかっているのか!」

荒々しいアドルフの声が響き、お茶会の参加者は一斉にシンと黙ってしまった。

そろりそろりとこちらを確認しにやってくる参加者たち。

「誰の許しを得て、オリヴィアに手を出した?言ってみろ」

「あ、あの…。僕はただ…」

恐縮して下を向き固まってしまった。

オリヴィアは下手に何か言ってしまうと疑われると思い黙っていることにした。

「オリヴィア。大丈夫か」

「え、ええ。大丈夫ですわ」

「オリヴィアは寛大だな」

アドルフはふっと笑って、近衛兵に命じた。

「この者を尋問室に連れていけ。あとで話を聞く。俺はオリヴィアを部屋まで送る。ノアを頼む」

そのあとアドルフは簡単に閉会の挨拶をしてくれて、オリヴィアを部屋まで送り届けてくれた。

歩いている間むすっとして機嫌が悪く、一言も口を利かない。

部屋に到着したので、オリヴィアは軽く会釈をし、中に入ればアドルフはもう戻るだろうと思ったのだが、そのままつかつかと部屋に入ってきた。

「お前はなぜ声をあげないんだ!」

眉は吊り上がっている。

「あの男がお前を襲おうとしたらどうするつもりだったんだ?あんなところで襲われたら不敬罪と言われて、宮廷を去らないといけなくなるぞ」

「は?」
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