国の再建のために捨てられたもと皇太子妃ですが強く生きています
「やはりお疲れですわね。帰りましょう」

「ダメだ!」

頭上から聞こえる声にガバっと起き上がる。
そしてバカだったと思った。
もっとこのまま膝の上で眠っているふりをしていればよかった。

「少し寝不足だっただけだ。問題ない」

こっぱずかしくて窓の方へ眼を向ける。

「本当に?」

「ああ。着いたんだろ。行くぞ」

そのままオリヴィアの手をとり観劇場へエスコートして行く。

そして2人で仲良く観劇。
観劇の時だけはくるくるかわるオリヴィアの表情がとてもいい。だから好きなのだ。観劇中のオリヴィアが。

昔はこういう表情をよくしていたのに…。

いつからこんな表情をしなくなったのか。

おそらく、カルトナーの情勢がメナードと今は亡きヒーリーのせいで闇の中に包まれ始めたときからだ。
表情を出す事すら難しい世の中になってしまっていた。
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