国の再建のために捨てられたもと皇太子妃ですが強く生きています


「ああ、どうか…お願いよ…」

オリヴィアは祈り続けた。
ただひたすら。

ジュリアンは、オリヴィアの咄嗟の判断でその場で一次的な治療を施したのが良かったのだと言った。
もうあと5分遅ければ命を落としていたと。

即効性の強毒だったようで、体中に回れば終わりだったらしい。

だがその場で持てる限りの治癒力をアドルフに注ぎ込んだ。
自分はどうなってもいいと思った。
アドルフが助かるなら。

そして、そのままアドルフと共に馬車に乗り、護衛達に抱えられながら宮殿に戻り緘口令を敷いた。
アドルフが倒れたと帝国中に噂がまわるとまた国は混乱を極めるからだ。

とは言っても劇場で沢山の者たちに見られている。
噂が回るのは時間の問題ではあるのだが…。

宮殿に戻り、ジュリアンに治療を頼もうとしたオリヴィアは愕然とすることになる。

「残念ですがオリヴィア様。僕には治癒能力はありません」

「え?」

「治癒能力は特殊な魔力です。治癒能力を持つ者は通常であれば他の魔力を持てない。特別なものなのです。強大な魔力のある者、例えばノア殿下なら治癒力を持っていてもおかしくありませんが、その力はあなたにうつってしまいましたからね。あなたしかいないのです。陛下を治せるのは」

「そんな…」

けれど、それならば自分の力を信じるしかない。

「ノアをお願いします。アンティラス侯爵。わたしは陛下の元に篭ります」
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