国の再建のために捨てられたもと皇太子妃ですが強く生きています
「ノア?」

「あれ?ぼく…」

「ノア今何かお祈りした?」

「うん。お母さまが作ってくださったケーキが食べられなくなるって思ったから、『当たるな!』って祈ったの。そしたら玉がとんでっちゃった」

なんということだろう…。

「ねぇノア。今の感じ。はじめて?」

「うん。そうだよ」

あーなんてことだろう。
これは確実に…
アシュハートン皇家の能力だ。

絶大なる魔力。

アシュハートンがカルトナーを帝国として導けたのはこの魔力のおかげだ。
世の中には魔力のある者がたまにいる。
特に貴族にはそういう者が多く、おそらく遺伝性のもので、アシュハートン皇家は昔から絶大な魔力のある家系なのだ。
たいていの歴代皇帝は多少なりとも魔力を要する。

だが、最近の皇帝は魔力が少なく、アドルフは魔力が0だった。

先日亡くなったというガーリア皇帝の息子は何人かいたが、魔力なしのアドルフを皇太子にしたのは皇后の息子だったというのもあるが、アドルフの魔力以外の能力がそれだけすごかったからだ。
魔力こそなかったが、身体能力、頭脳、剣術、馬術、語学力、すべてにおいて彼は天才と言ってもよかった。

オリヴィアもかなり能力の高い令嬢だったと自負しているが、一緒に勉強しても1教科たりともアドルフに勝てたためしはない。

だからこそ反対意見も多い中、その当時勢力があったノックス公爵家を後ろ盾にさせ、ガーリア皇帝自らがしくんでアドルフを皇太子に据えられたのだが…。

今ノックスも失脚し、ガーリア皇帝も亡くなられたとなると、アドルフの立場はかなり微妙なものになっているだろう。

やはりだめだ。絶対に見つかっては。
ノアはすぐに殺されてしまう。
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