国の再建のために捨てられたもと皇太子妃ですが強く生きています
「え?そうか?」

「ええ。悪い夢でも見たの?」

ズバリだ。オリヴィア。

「俺は、想像以上に母親と対峙することに怖気づいているのかもしれない」

「え?」

弱音を吐いたアドルフをオリヴィアはじっと見つめた。

そしてアドルフの手をさっと取ると、ギュっと握った。

「アドルフの痛みは並大抵のものではないわね。ごめんなさい。もっとわかってあげるべきだった」

「オリヴィア?」

「わたし、今まで自分の事ばかり考えていたんだと気づいたわ。自分がおびえていたあの初夜の事ばかり。そのあと6年間放置されていたことばかり。けれど、アドルフは、実のお母さまに殺されるかもしれないような苦痛を味わっていたのだもの。わたしのことなんて考えられなくて当たり前ね」

オリヴィア…。
俺は…
俺は…

「オリヴィア。夢を見た」

「夢を?」

オリヴィアに全部吐き出そう。聞いてもらいたい。
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