国の再建のために捨てられたもと皇太子妃ですが強く生きています
オリヴィアの手をひき、ジュリアンにひたすらついて回っていると、ピタリと突然立ち止まった。

「ここです」

そこは、古びた城といった外観で、長い間手入れがされていないような人が住んでいるのかわからないような建造物だった。
庭は荒れ放題で外壁には蔦が絡み、苔が覆っている。

「ひどいな」

「ええ。魔物がいてもおかしくないような庭ですね」

「ここに。ノアが?」

「ここで痕跡は途絶えています。ただ…建物の中から殿下の魔力を感じない。なぜだ?もしや…」

「人の気配はするわね」

今まで静かだったオリヴィアが驚くくらい瞳を輝かせている。

「オリヴィア?」

「もう、ここまで来れば落ち込んでなどいられない。力を振り絞ってノアを助けるまでよ」

オリヴィアは口を真一文字に、引き結び古城を見上げていた。

これが。真の母の姿だ。
これこそが…
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