国の再建のために捨てられたもと皇太子妃ですが強く生きています
「アンティラス先生が心の声で導いてくださいました。あの悪人魔術師には聞こえない様細心の注意を払って。僕はお父様とお母様を救いたかった。だから他の者たちを…殺しました。これでよかったですよね?」

少し手が震えている。

それはおそらく、人を初めて殺めたときの恐ろしさだろう。

「怖かったか。ノア」

「はい…」

まっすぐにアドルフを見つめた。

「だが、君主たるもの敵は多い。人を殺めねばならぬこともある。それはわかっているな」

「はい」

「お前は、お父様とお母様を護ってくれた。それは正しいことだよ。ノア」

ほっとしたようにノアは笑った。

「それなら、よかったです」
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