国の再建のために捨てられたもと皇太子妃ですが強く生きています


神殿にとってはオリヴィアが辞めるのがかなり手痛いのか、どうにかして引き止めようとしているのがありありとわかったが、ノアを一人で行かせるわけにはいかない。
オリヴィアにとってもようやく慣れてきた仕事ではあったのだが泣く泣く別れを告げた。

ジュリアンの屋敷はお婆さまから譲り受けたものらしくライネルの王都ソリアのはずれの山の方にあり、ここなら人の視線は届くまい。

屋敷や庭も広く、魔力を扱う家系だけあり、人の視線を気にするためか外壁はかなり高く作られている。

これならノアはのびのびと魔力のコントロールを学べそうだ。

「アンティラス卿。何から何まで準備いただき本当に感謝しています」

北部の田舎町のアミングウェイからソリアまで目立たぬよう無印の粗末な馬車で2日ほどかけて旅をし、ようやくたどり着いたオリヴィアとノアに用意された部屋はかなり大きなものだった。

カルトナー帝国で公爵令嬢だったオリヴィアにとっても申し分のない部屋。

「いえ、公爵令嬢であるあなたにとってはこの部屋でも粗末なくらいですよ。お二人で使うには狭いかもしれませんがあいにく王都ののはずれにある古い建物です。ご容赦願いたい。どうかジュリアンとお呼びください」

「とんでもありません。ありがとうございます。では、ジュリアン様とお呼びしても?」

「はい」

「わたくしもオリヴィアでいいですわ」

「では、オリヴィア嬢とお呼びいたします」

ノアのほうはといえば、はじめて見るふかふかのベッドに喜んでベッドの上をゴロゴロしている。
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