国の再建のために捨てられたもと皇太子妃ですが強く生きています
ここではゆったりと時間が流れる。

物心ついてから自分の時間というものがなく、あくせく働いてきた自分にはもったいない時間だ。

小さいころから皇太子妃の教育のために長い時間を費やし、ライネルに来てからは、ノアを育てるために必死で何も自分のことを考える余裕などなかった。
こんなに時間があると暇をもてあましてしまう。

あまりにやることがないので、やりはじめたキルト制作が結構大層なものになってきている。
刺繍や裁縫は妃教育でもやったが、好きというほどでもなかった。
だがこう暇だと元来が働き者のオリヴィアは逆にイライラしてくるので何か出来るものはないかと考えたときに、これくらいしか思いつかなかったのだ。
やるからにはきちとんしたものをつくりたい。
そう思って、クオリティーを追求しつつ作り続けたラグが今1枚できあがった。

これを部屋のソファにかけたらアクセントになっていいと思うのよね…。

できあがったキルトラグをソファにかけていたときだ。
バタンと扉があいてノアが入ってきた。
伺う様に後ろからコツコツと扉をノックするのはジュリアンだ。

「お母さま!僕、第一段階は合格をいただいたよ!」

「まぁ。そうなの?」

飛びついてきたノアを抱きしめ、額にキスをした。
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