国の再建のために捨てられたもと皇太子妃ですが強く生きています
「妻?」

「ああ。愛する妻だが、情勢が乱れる中、国外へ脱出して今行方不明だ。とてもつらいが俺の家族は彼女だけだ」

「そうなのか。もしや…」

首長ガクトは気づいている。その妻と生き別れたのが自分がノックスを襲ったときだということを。

「残念だ。だがわしらにはわしらの言い分がある。だから謝りはしないぞ」

「わかっている」

何もマナワ族を恨みはしない。
悪いのはメナードとヒーリーなのだから。

「では同意をしてくれるか」

「そうだな。我らに係らないというのなら同意しよう」

彼らは放っておいてほしいのだ。
だから今後関わらないと言う約束が1番有効であることをアドルフはわかっていた。

ただの口約束。
マナワ族は契約書のとりかわしなどしない。
だが、これが彼らのやり方であり、一度口にしたことは必ず守る。

だがこちらとしても口約束だけならありがたい。
メナードの首をとってもらっても背後にカルトナーがかかわっている事は伏せておけるからだ。

とりあえずマナワ族を泳がせよう。

即位後の残処理もあと少し…

カーティスやロゼレムを昇格させなければならないし…。
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