国の再建のために捨てられたもと皇太子妃ですが強く生きています
「結婚式の夜に殺されてしまったという…あの…」

「こらっ!」

どうやらオリヴィアのことは禁忌だと皆は思っているらしかった。

つい言ってしまった者はしまったとばかりに口を押さえている。

「皆宴を楽しんでくれ。俺は少し休ませてもらうよ」

アドルフはそのまま自室に引き上げた。

明日。発とう。
オリヴィアがもし…死んでしまっていたとしても、この目で確かめなければ諦めもつかない。
いやでも絶対に生きている。


アドルフは次の日、カーティスとアイリーンに執務を任せて、ロゼレムを連れ帝都カルトを旅立った。

「陛下。もう6年以上昔のことなのに…国を空けてまでいかれるのですか?」

アイリーンは最後まで反対していたが、ずっとカルトナーの帝国民と自分を守るために必死で走り続きてきたアドルフにとってはこの問題が解決しないと前に進めない案件だった。

「俺にとっては過去の出来事ではない。ひとときも忘れたことのないことだから現在進行形なんだ。国をよろしく頼む」

アドルフはこうして…ライネル王国へと秘密裏に入国したのだった。
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