国の再建のために捨てられたもと皇太子妃ですが強く生きています

ロゼレムは後ろに控えていたが、この2人の間には自分が入り込めない空気があることに気づいていた。
仲がよかった親友同士が引き裂かれ、再会した時のような雰囲気。

だから、つかつかとそのフードの男、おそらく、『ブラッドリー・テッド・ノックス』がアドルフに近づき、思いっきり左頬を殴りつけたときもロゼレムは手を出さなかった。

「これは俺からの分です。そして…」

フード男はもう一度踏ん張り、今度は左手で右頬を思いっきり殴りつけた。

「これはっ！オリヴィアの分だ！どうしてだ！なぜ！」

殴ったことで興奮がさらに増したのかフード男はアドルフの胸ぐらをつかむ。

アドルフはされるがままになっていた。

「オリヴィアがどれだけっ！」

そこまでいうとフード男は突然黙り込んだ。
すでにフードはとれていて、オリーブ色の艶のあるウエーブのかかった髪に縁どられた象牙色の素肌の激昂している美青年が目に入り、普段アドルフで見慣れているはずだったイケメン高位貴族が2人その場所で喧嘩まがいの事をしていることにロゼレムは言葉を失っていた。

これが高位貴族のオーラというものか…。