国の再建のために捨てられたもと皇太子妃ですが強く生きています

オリヴィアは当初、留学していた兄と一緒にドリーおばあ様の元へ身を寄せていたが、カルトナーから逃げてきて1か月もする頃に悪阻に襲われてしまった。
なぜ一度きりの交わりで子をなしてしまったのかと涙を流し部屋にこもりそのままお腹の子と一緒に餓死してしまえば楽になるかもしれないと考えながら廃人のような日々を過ごしていたが、5か月ほどたったあるときおなかの中でふとかすかに動く気配を感じ取った。

ああ…。生きてるのね。
わたしのお腹で…
わたしみたいな母親のお腹なのにあなたは懸命に生きようとしているのね…。

それからオリヴィアはこの子のために生きると決めた。

そしてその5か月後、玉のようにすこやかな男の子が誕生した。

オリヴィアは名を『ノア・フレデリック・ノックス』と名付け、すぐさまアンネ叔母の家に移り住んだ。

移り住んだ理由は、この子があまりにもアドルフにそっくりだったからだ。

さらさらの黒髪に深く美しい碧い瞳。そして抜けるように白い肌。
整った顔立ち。

小さいころからアドルフの幼馴染として育った兄のブラッドリーはあまりに似ているため絶句し、アンネ叔母のところに身を寄せることにすぐに同意した。
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