国の再建のために捨てられたもと皇太子妃ですが強く生きています
◇

「わたしは皇后にはなりません」

「何？」

アドルフは自分の耳を疑った。
オリヴィアが言った言葉の意味を理解するのに数分を要した。

「皇妃から始めたほうがいいと思っているのか？」

「いいえ。そうではなく、ノアの母としてカルトナーの宮殿には参じますが、あくまでノアの母としての地位にとどめていただきたく思います」

「何を…！？」

アドルフの眉がつりあがる。
となりにいたブラッドリーもぴくっと眉を動かした。

ジュリアンは優し気な表情を崩さないが。

父子の再会のあと、屋敷の奥で待機していたブラッドリーが加わり、ジュリアンが晩餐を用意してくれ、楽しい夕食会になっていた。

そんな中どうしても腑に落ちなかったオリヴィアは、いつカルトナーに入るかという話になった時に爆弾発言をしたのだ。

「どうしてだ？オリヴィア」

ブラッドリーがやさしく聞く。

「それは…わたしの気持ちはどうしても…皇后になる気にはなれないのです」

オリヴィアが小さいころから受けて来た妃教育を持ってすれば、今すぐ皇后をこなすことはできる能力は持っている。
もともとの家柄はノックス公爵家。
しかもアドルフの1人しかいない息子を産んだ。
皇后になるのが自然の流れだ。

だが、どうしても…オリヴィアには無理だと感じてしまうのだ。
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