罪と愛
「あら?」



同い年,いや,年下?

どこにも染まってないような,純粋そうな表情。

身長は…ヒールの私と目が合うくらい。

彼に用?



「あぁ,なにかな?」



ゆっくりとした口調。

温和そうな笑み。

…なるほどね。

私は初めて彼の装いを正しいと感じた。



「…先程奥様が探しておいででした。身重のため,今は会場右端の椅子で休んで頂いております」

「そうなのか。君,ありがとう。私は急がなくてはいけないから,これで失礼する」



彼は私にも気味の悪い微笑みを向けて,形だけ急いで去って行く。

さて,どうしましょうか。

残ったのは,私一人と声をかけてきた若者が一人。
< 9 / 25 >

この作品をシェア

pagetop