保健室で秘密の関係
「いらっしゃい。……黒炎が女性を連れてくるのは珍しいね。いつもはボッチなのに、どうしたんだい?」

「ボッチとか今風の言葉を使って若作りするのはやめろよ、マスター。あんたもそんなに若くないんだから」

「見た目は20代なんだけどね」


「あ、あの……えっと、」


大人のお兄さん。黒髪だから、見た目は人間に見えるけど違うんだよね。


さっきの会話からして大分お年なのかな?


柊君のことを下の名前で呼ぶくらいだから本当に行きつけなんだ。


「紹介するよ。俺の恋人、霧姫朱里」

「霧姫朱里です。よろしくお願いします」


肩を掴んで自分のほうに寄せる。本当の恋人みたい。って浮かれてちゃダメ。これはあくまでもフリなんだから。


私はマスターと呼ばれているお兄さんにペコッと頭を下げた。


「その子は吸血鬼なのかい?」

「当たり前だろ?」


「柊君?」

「柊、君?君たち付き合って日が浅いのかな?黒炎、彼女はまさか……」


「そんなわけないだろ。つーことで見合いの話は無しでいいよな」


「お見合い!?」

「君は彼女なのに知らなかったのかい?」

「朱里には黙ってたんだよ。彼女を悲しませるようなことはしたくないからな」


「そうか。変わらず黒炎は優しいね。ほら、座りなさい」

「あ、ありがとうございます」


柊君が座ると同時に私もカウンター席に腰を下ろした。


柊君がお見合い……。

まだ高校生なのに?


それに柊君は恋人を作るのは嫌だって言ってたのに。あっ、そっか。吸血鬼同士なら寿命がないから別なんだ。
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