保健室で秘密の関係
「付き合うならさ」

「うん?」


「霧姫が付き合うならさ。吸血鬼じゃなくて、ただの人間にしたほうがいい」

「なんで?」


「俺たち吸血鬼は死なないんだ。孤独になるくらいなら誰かを好きになるなんて……したくない」

「……」


だから恋人がいないって言ってたんだ。恋人ができないんじゃなくて、作らない。


人間の寿命は吸血鬼からしたらほんの一瞬。仮に人間と恋に落ちても、遅かれ早かれ人間のほうが先に死ぬ。そのあとに残されるのは吸血鬼。


寿命がない吸血鬼が恋人を失った悲しみは想像するだけでも心が痛くなる。


「でも相手がいないのも寂しくない?」

「好きな奴の死を見るほうが俺にとっては辛い」


「そうだよね。ごめん、変な話しして」

「いや、俺こそ悪いな。霧姫は人間なんだから人間の誰かと恋しろよ。人を好きになることは悪いことじゃないからさ」


「うん……」


人を好きになることは悪いことじゃない。じゃあ、吸血鬼に恋をするのは悪いこと?


その好きな誰かは柊君です……っていったら、あなたはどう思うの?
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