保健室で秘密の関係
「……なぁ。嫌じゃないのか?」

「え?」


放課後。

私は昨日と同じように柊君に血をあげていた。


「俺にこうして吸血されること。貧血にならないように加減してるとはいえ、毎日吸われると痛いだろ?」

「柊君こそ私がいないとツラいでしょ?」


我ながらズルい質問。けど、私しかいないって言ってほしいから。


特別だと思っていなくても、特別だと思わせたいの。


「そうだな……」

「それ、ほんと?」


本当にそう思ってる? だとしたら嬉しいな。でもそれは食料として? それとも……。


「お前からは色々もらってるからな」

「いろいろ?」


血を貰ってるって意味?


「お前からは元気をもらってるっていうか……。霧姫と話してると楽しいつーか。言葉にするのは難しいが、そんな感じだ」

「……」


「俺の前で学校の話をしてくれるだろ?俺はお前と同じクラスだが、教室で起こってることは知らないし。それにお前はいつも笑顔だから」

「私が笑顔だと柊君が元気になるの?」


「そうだな。俺はお前みたいに表に感情を出せないから。ただ、出すのが苦手ってだけで笑えないわけじゃないぞ」

「うん」


なんで言い直したんだろう?


たしかに柊君の笑った顔は見る機会が少ないけど口元が緩んでるときとか楽しそうにしてるなって表情になることもあるのに。

自分だと気づいてないのかな?


心から笑顔になったことがないって意味でいってるんだとしたら、柊君は1度も私に本当の笑顔を見せたことは無い。
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