保健室で秘密の関係
「今日は教室で何か変わったことなかったか?」

「う〜ん。とくになにもなかった」


「なに考えてるんだ?」

「やっぱり柊君がいないと寂しいなって」


吸血鬼の話題は出たけれど、柊君が吸血鬼だとはまだ知られてないし。ここまできたら卒業まで知られてほしくない。


柊君の正体を知ってるのは私だけ。それなら私だけでいい。誰にも邪魔してほしくない……。


これが好きな人を取られたくないってキモチ?

こういうのなんていうんだろ。

独占欲? 嫉妬? ヤンデレ? もし、どれかに当てはまったとしていたら、私はなんて欲深い人間なんだろう。


だって、柊君とはただの秘密の関係ってだけなんだよ?私がいくら望んだってそれ以上先に進むことはできない。

出口のないトンネルって、希望のない未来ってこんな感じをいうのかな。お互いに好きじゃないと結ばれないって、恋って、難しいね。


「寂しいって毎日会ってるだろ?」


保健室で会うのは不満か?と言葉を続ける柊君。


「保健室じゃなくて教室で。せっかく隣の席になったのに柊君がいないのは私……」

「それは無理だ」


「わかってる」


無茶なお願いだと自覚してる。それをわかった上で言ってみたの。


困った顔をしないで。私は柊君にそんな表情をさせるためにいったわけじゃないの。


「なぁ、霧姫」

「なに?柊君」


「いや……やっぱりなんでもない」

「うん」


柊君が言おうとしてたこと、なんとなくわかるよ。この関係に終止符を打とう、でしょ?
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