エリート御曹司に愛で尽くされる懐妊政略婚~今宵、私はあなたのものになる~
 愛や恋は必要ないと言っていた清貴にとって、自分のこの思いは迷惑でしかないと思っていた。だからこそ胸の奥で押さえつけて我慢していた。

「こんな俺を愛してくれるのか?」

 瞬きをした菜摘の目からより一層おおきな涙が零れ落ちた。それを清貴の男らしい節だった指が拭う。

「もう一度チャンスを、俺の愛を伝えるチャンスをくれないか? 愛してるんだ菜摘」

「あぁ……私、夢を見てるの? ねぇ」

 菜摘は彼の首に腕を回して、しっかりと抱きしめた。すると清貴も抱きしめ返してくれる。

「もう一度言う。菜摘はいれば何もいらない。俺のことを少しでも思ってくれているなら、何があったとしても俺の前からいなくなる選択肢は持たないでくれ。もう二度と間違えたくない。問題が起きても、ふたりで解決してふたりで歩いていきたいんだ」

「私、ごめんなさい。ずっと清貴のためにどうすればいいのか考えていたの。でもそれが全部間違いだったなんて。……バカだった」

 これまでもこれからも、菜摘にとって大切なのは清貴だ。だからこれまでだってずっとそうしてきたつもりだったが、それが間違っていたのだ。

 ぼろぼろと涙を流ししゃくりあげながら、途絶え途絶えに謝罪をする。

「いや、菜摘にそういう選択をさせたのは俺だ。謝らなくていい。悪いのはいつも菜摘にかばわれていたのに、それに気づかなかった大馬鹿な俺だ」

 ぎゅっと抱きしめられた菜摘は、これまで言えなかった素直な気持ちをもう我慢しないでいいとわかって彼に伝える。

「私にとって清貴がすべてなの、今も昔も。だから離れていても清貴が幸せならそれでいいって思っていた。でも違うんだよね?」

 清貴は困ったような表情で菜摘を見つめる。

「お互いが隣にいないで、どうやって幸せになるって言うんだ?」

 彼の言葉に、心が歓喜で打ち震える。

「私、清貴なにもあげられないよ。それでも好きでいていい?」

 清貴は菜摘を抱きしめていた腕を緩めると、顔を覗き込んだ。

「ここに、俺の腕の中にいるだけで奇跡だ。俺に菜摘をくれればそれだけでいい」

「清貴、私ね、苦しかった。ずっと好きっていいたかった。好きって言う気持ちは清貴以外にはあげられないんだよ」

「菜摘、今日からは全部受け止める。どんな小さな好きの気持ちもこぼさない。菜摘は変わりに俺の愛を受け取ってくれ」
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