エリート御曹司に愛で尽くされる懐妊政略婚~今宵、私はあなたのものになる~
エピローグ

エピローグ

 それは九月下旬秋晴れの日。今年は気温が下がるのが例年より早くここ数日日中も過ごしやすい日が続いていた。

 ふたりが結婚をしてから二年と少し月日経っていた。

 今日は加美電機の創立記念式典が行われる予定になっている。菜摘はもちろん加美家の一員、そして清貴の妻として出席する。

 こういった会には何度が出席してきた。馴れないながらも義母の祥子や清貴の助けもありなんとかこなしている。

 しかし今日はいつもよりも緊張していた。なにせ、今日は夫である清貴が主役だからだ。

 義父の秀夫が当初の予定通り引退し、清貴が次期社長となることを発表することになっている。

 すんなりと清貴が跡取りと認められたわけではない。やはり子どもがいないことで、反対されたことも多かった。

 しかし彼は次期社長は彼でなければならないと周囲に言わしめるほどの成果を出した。どきに菜摘が心配するほどのハードワークをこなし、見守ることしかできなかった菜摘は何度もやきもきした。

 しかし今日立派な彼の姿を見ると誇らしい気持ちになった。

(あんなかっこいい人が、私の夫だなんて)

 結婚して二年以上経過しているが、彼への思いは薄れない。むしろ日に日に彼の愛情を強く感じている。

「菜摘ちゃん!」

 名前を呼ばれて振り向くと、そこには賢哉と桃子が立っていた。ふたりも今日の会に招待されているのだ。普段は作業着の賢哉は機馴れないスーツにそわそわしているが、母になった桃子は独身時代と変わらず美しかった。

「ひさしぶりに夫婦水入らずで出かけるから、おしゃれしちゃった」

 かわいらしく首をすくめる桃子は、賢哉の腕に手を絡ませている。ふたりもとても幸せそうだった。
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