エリート御曹司に愛で尽くされる懐妊政略婚~今宵、私はあなたのものになる~
「そんな! いきなり言われたって困る。どこの誰だかわからない相手と見合いだなんて」
菜摘が年季の入った事務椅子から立ち上がった瞬間、ひとりの男の声がした。
「その心配はいらない。知らない相手じゃないからな」
開いていた扉から入って来た人物を見て、菜摘は言葉を失う。いや、正確には意識のすべてをその男にもっていかれてしまって彼以外の何も目に入らないし、聞こえなくなってしまった。
指先が震える。見間違いか他人の空似だと思いたかった。けれどこの顔を忘れるわけ、忘れられるわけなどなかった。
「久しぶりだな、菜摘」
「……き、清貴(きよたか)」
掠れた声で彼を呼ぶと、口角だけ上げた冷淡な笑みを浮かべた。
「俺のこと、ちゃんと覚えていたんだな」
(忘れられるわけないじゃない)
心の声を口にすることは決してできない。そんなことをしたら過去の菜摘の選択を否定することになる。
「な、なんでここに?」
理由はわかっているのに、聞かずにはいられなかった。
「もちろん、君と見合いをするために来たんだ」
はっきりと言い切った彼は、菜摘が七年前自ら別れを切り出した相手、加美(かみ)清貴だった。
菜摘の受けた衝撃など気にする様子もなく、彼は言い放った。
「君は、俺と結婚するんだ」
菜摘が年季の入った事務椅子から立ち上がった瞬間、ひとりの男の声がした。
「その心配はいらない。知らない相手じゃないからな」
開いていた扉から入って来た人物を見て、菜摘は言葉を失う。いや、正確には意識のすべてをその男にもっていかれてしまって彼以外の何も目に入らないし、聞こえなくなってしまった。
指先が震える。見間違いか他人の空似だと思いたかった。けれどこの顔を忘れるわけ、忘れられるわけなどなかった。
「久しぶりだな、菜摘」
「……き、清貴(きよたか)」
掠れた声で彼を呼ぶと、口角だけ上げた冷淡な笑みを浮かべた。
「俺のこと、ちゃんと覚えていたんだな」
(忘れられるわけないじゃない)
心の声を口にすることは決してできない。そんなことをしたら過去の菜摘の選択を否定することになる。
「な、なんでここに?」
理由はわかっているのに、聞かずにはいられなかった。
「もちろん、君と見合いをするために来たんだ」
はっきりと言い切った彼は、菜摘が七年前自ら別れを切り出した相手、加美(かみ)清貴だった。
菜摘の受けた衝撃など気にする様子もなく、彼は言い放った。
「君は、俺と結婚するんだ」