エリート御曹司に愛で尽くされる懐妊政略婚~今宵、私はあなたのものになる~
結婚の話だというのに、幸せやときめきなんてない寂しいものだ。そもそも事情が事情なのでそんなものを期待する方が間違っていると言われればそれまでなのだけれど。
家に着くまでの間、お互い一言も話をしなかった。ときどき清貴のことを気にしてみるが、彼はまっすぐ前を向いて、運転をしているだけだった。
(OKしてしまったけれど……これから大丈夫なのかな)
不安しかないこれから先に待っている結婚生活。
重い空気が漂う車内で、菜摘はすでに後悔してしまいそうだった。
***
「ふぅ」
大きく息を吐いた清貴は、ネクタイを緩めながら手に持っていたバッグをソファに放り投げた。続いてその上にネクタイ、ジャケットが重なる。
本人は冷蔵庫に向かい、中からビールを取り出すとごくごくと喉を鳴らして飲んだ。
(菜摘、相当困っていたな)
その顔を思い出して、満足すると思いきや、チクリと胸が痛むのだから不思議なものだ。
過去にあんなひどい仕打ちをされたのに、七年もたったのにいまだに彼女に対してこんな感情が残っているとは自分に驚いた。
菜摘に嫌がらせなのかと問われた際、内心ぎくりとした。その思いがゼロはないからだ。うわべは何とか笑ってごまかしたが、いまだに昔のことを引きずっていると彼女におもわれたくない。
なけなしの彼自身のプライドだった。
ソファに座って二本目のプルタブを開ける。ペースが速いのは承知だが、今日くらいは何も考えずに飲みたい気分だった。
酒を煽りながら、これまでのことを振り返る。
七年前、彼女が別の人を好きになり、お互い別々の道を歩くと決めた。向こうでがむしゃらに勉強をし知識と人脈を手に入れた。
言い寄って来る女性がいなかったわけじゃない。でも誰にも本気になれずに、ここのところは女性に対する興味さえ薄れていた。菜摘を心から追い出すための七年だったと言っても過言ではない。
そして帰国後、世話になった大学時代の恩師が退職をして広島の実家に戻ると聞いた。最後に挨拶をと思い訪れた研究室で、たまたま菜摘の話になったのだ。
「あ、ほら君と仲良かったあの……宮城さん。彼女も先日来てくれたんだ」
「あ、そうなんですね」
彼女の名前が出たと同時に、わずかに動きが止まった。しかし教授はそんなこと気が付かずに話を進める。
家に着くまでの間、お互い一言も話をしなかった。ときどき清貴のことを気にしてみるが、彼はまっすぐ前を向いて、運転をしているだけだった。
(OKしてしまったけれど……これから大丈夫なのかな)
不安しかないこれから先に待っている結婚生活。
重い空気が漂う車内で、菜摘はすでに後悔してしまいそうだった。
***
「ふぅ」
大きく息を吐いた清貴は、ネクタイを緩めながら手に持っていたバッグをソファに放り投げた。続いてその上にネクタイ、ジャケットが重なる。
本人は冷蔵庫に向かい、中からビールを取り出すとごくごくと喉を鳴らして飲んだ。
(菜摘、相当困っていたな)
その顔を思い出して、満足すると思いきや、チクリと胸が痛むのだから不思議なものだ。
過去にあんなひどい仕打ちをされたのに、七年もたったのにいまだに彼女に対してこんな感情が残っているとは自分に驚いた。
菜摘に嫌がらせなのかと問われた際、内心ぎくりとした。その思いがゼロはないからだ。うわべは何とか笑ってごまかしたが、いまだに昔のことを引きずっていると彼女におもわれたくない。
なけなしの彼自身のプライドだった。
ソファに座って二本目のプルタブを開ける。ペースが速いのは承知だが、今日くらいは何も考えずに飲みたい気分だった。
酒を煽りながら、これまでのことを振り返る。
七年前、彼女が別の人を好きになり、お互い別々の道を歩くと決めた。向こうでがむしゃらに勉強をし知識と人脈を手に入れた。
言い寄って来る女性がいなかったわけじゃない。でも誰にも本気になれずに、ここのところは女性に対する興味さえ薄れていた。菜摘を心から追い出すための七年だったと言っても過言ではない。
そして帰国後、世話になった大学時代の恩師が退職をして広島の実家に戻ると聞いた。最後に挨拶をと思い訪れた研究室で、たまたま菜摘の話になったのだ。
「あ、ほら君と仲良かったあの……宮城さん。彼女も先日来てくれたんだ」
「あ、そうなんですね」
彼女の名前が出たと同時に、わずかに動きが止まった。しかし教授はそんなこと気が付かずに話を進める。