エリート御曹司に愛で尽くされる懐妊政略婚~今宵、私はあなたのものになる~
七年も前に、最低の状況で振られた相手だ。それなのになぜこんなに気にしてしまうのか、清貴自身も自分の気持ちも行動も理解できない。
菜摘と賢哉が工場の中に消えていったあと、清貴はイライラした様子でエンジンをかけて車を発進させた。
家に帰る間も、イライラともやもや、そして菜摘の陰りのある表情が頭の中に渦巻いて離れない。あの場に行かなければこんな思いをしなくても済んだのにと、後悔するほどだった。
とくに菜摘と賢哉が並んでいる姿を思い出すと怒りが込み上げた。
何をどうしても気持ちが整理できずに、気が付けば清貴は知り合いに菜摘の身辺についての調査を依頼していた。
それから数日後、加美電機の最高執行責任者である清貴に与えられた個室の大きなデスクの上に封筒が置かれている。
午後二十二時。終業時刻は過ぎてかなりの時間が経つ。秘書さえも残っておらずこのフロアにいるのは彼だけだ。
封筒の中には、菜摘の調査結果が入っている。プライベートな調査なので帰宅後にみればいいのだが、我慢できずにその場で開く。
書類に目を走らせて、彼は眉間の皺を寄せた。
「なんでまだ結婚していないんだ」
思わず気持ちが口から洩れる。
清貴を振り夢だった留学まであきらめて、賢哉との交際を菜摘はあのとき選んだはずだ。それにもかかわらずなぜまだふたりは独身同士なのだ。
いとこ同士であれば結婚は可能だ。それにふたりの様子から仲が悪いわけでもなさそうだ。
この調査からわかることは、菜摘はまだ独身であるということだけ。
それと気になるのは、あの工場の経営状態だ。持っている技術は一流であり取引先も優良企業が多い。しかし財務状況はどんどん悪くなっているようだ。
理由は社長の運営資金の私的流用。ここのところ特にひどいらしく銀行への返済の遅延、税金の滞納が続いている。
(菜摘が頭をさげていたのは、行員だろうか……)
数字を確認すると確かにひどい。持っている技術と会社の価値が見あっていない。このままではそう遠くない未来、この工場はつぶれるだろう。
報告書を読み終わり、清貴の頭の中にあるひとつのことが浮かぶ。
「いや、何バカなことを」
自分の考えに呆れて、自分自身で突っ込みを入れる。
脳内の冷静な自分は「バカなことを」と言うけれど、もうひとりの自分が心の中の欲望を掻き立てる。
菜摘と賢哉が工場の中に消えていったあと、清貴はイライラした様子でエンジンをかけて車を発進させた。
家に帰る間も、イライラともやもや、そして菜摘の陰りのある表情が頭の中に渦巻いて離れない。あの場に行かなければこんな思いをしなくても済んだのにと、後悔するほどだった。
とくに菜摘と賢哉が並んでいる姿を思い出すと怒りが込み上げた。
何をどうしても気持ちが整理できずに、気が付けば清貴は知り合いに菜摘の身辺についての調査を依頼していた。
それから数日後、加美電機の最高執行責任者である清貴に与えられた個室の大きなデスクの上に封筒が置かれている。
午後二十二時。終業時刻は過ぎてかなりの時間が経つ。秘書さえも残っておらずこのフロアにいるのは彼だけだ。
封筒の中には、菜摘の調査結果が入っている。プライベートな調査なので帰宅後にみればいいのだが、我慢できずにその場で開く。
書類に目を走らせて、彼は眉間の皺を寄せた。
「なんでまだ結婚していないんだ」
思わず気持ちが口から洩れる。
清貴を振り夢だった留学まであきらめて、賢哉との交際を菜摘はあのとき選んだはずだ。それにもかかわらずなぜまだふたりは独身同士なのだ。
いとこ同士であれば結婚は可能だ。それにふたりの様子から仲が悪いわけでもなさそうだ。
この調査からわかることは、菜摘はまだ独身であるということだけ。
それと気になるのは、あの工場の経営状態だ。持っている技術は一流であり取引先も優良企業が多い。しかし財務状況はどんどん悪くなっているようだ。
理由は社長の運営資金の私的流用。ここのところ特にひどいらしく銀行への返済の遅延、税金の滞納が続いている。
(菜摘が頭をさげていたのは、行員だろうか……)
数字を確認すると確かにひどい。持っている技術と会社の価値が見あっていない。このままではそう遠くない未来、この工場はつぶれるだろう。
報告書を読み終わり、清貴の頭の中にあるひとつのことが浮かぶ。
「いや、何バカなことを」
自分の考えに呆れて、自分自身で突っ込みを入れる。
脳内の冷静な自分は「バカなことを」と言うけれど、もうひとりの自分が心の中の欲望を掻き立てる。