エリート御曹司に愛で尽くされる懐妊政略婚~今宵、私はあなたのものになる~
どうかしているという自覚はある。しかし清貴は自らの中に芽生えた欲望を押さえることができなかった。
そして彼はすぐに、菜摘の叔父である和利に連絡を入れたのだ。
「ふぅ」
大きく息を吐いて手にしていたビールをテーブルの上に置いた。そしてゆっくりと立ち上がると本棚の中にある一冊の本を取り出す。それは菜摘と出会ったあのときに彼女に貸した本だった。そしてそこには彼女からもらったしおりを挟んでいる。
女々しいと思いつつも、アメリカにも持っていった。そしてそれを今も捨てられないでいる。
布製のそれはずいぶんくたびれてしまって、黄ばみところどころほつれている。彼女の手製のしおり。指先でなぞると、自然とこれをプレゼントしてくれたときの菜摘の顔が思い浮かぶ。
今でさえ淡いあのときの気持ちがよみがえってくる。
忘れたくても忘れられない。だからこそ「結婚」だなんて狂った提案を彼女にした。
ひとりの女にみっともなく縋り付く自分、これが執着なのか恋なのかさえもうわからないでいた。
菜摘は自分を捨てて他の男を選んだ女なのに。あのとき賢哉に向けた嫉妬心はいまだに清貴の中にくすぶっている。今回菜摘と賢哉が一緒にいるのをまた目撃して、再度燃え上がった。
(いったい俺はいつからこんなやつになったんだ)
何もかもスマートにこなしてきた。もちろんそれなりに努力もしてきた。周りにはできないことはないのでは……とまで言われたことも一度や二度じゃない。
それなのに、菜摘に対してだけは、何もかもうまくいかない。
ただ言えることは、菜摘が誰かのモノでないなら、自分のモノにしたかった。欲望に忠実に彼女を手にしたかった。
たしかに両親に結婚を急かされている。しかしこんな状況のまま他の女性に目を向けることなんて到底できない。そうとなれば結婚相手は菜摘しか考えられない。
彼女にとっても悪い話ではないはずだ。
菜摘は父親の残した工場を大切にしていた。だからこそ跡を継いでくれた叔父や従兄弟が跡を継いでくれたことをものすごく感謝している。だからこそ和利が会社の金を使い込んでも、これまで許してやってきたのだろう。
しかしこのままでは倒産まっしぐらだ。そこに手をさしのべる会社は今のところいないだろう。あの社長さえいなければ、あの工場はもっと日の目を見るはずだ。彼女もそれを望むだろう。
そして彼はすぐに、菜摘の叔父である和利に連絡を入れたのだ。
「ふぅ」
大きく息を吐いて手にしていたビールをテーブルの上に置いた。そしてゆっくりと立ち上がると本棚の中にある一冊の本を取り出す。それは菜摘と出会ったあのときに彼女に貸した本だった。そしてそこには彼女からもらったしおりを挟んでいる。
女々しいと思いつつも、アメリカにも持っていった。そしてそれを今も捨てられないでいる。
布製のそれはずいぶんくたびれてしまって、黄ばみところどころほつれている。彼女の手製のしおり。指先でなぞると、自然とこれをプレゼントしてくれたときの菜摘の顔が思い浮かぶ。
今でさえ淡いあのときの気持ちがよみがえってくる。
忘れたくても忘れられない。だからこそ「結婚」だなんて狂った提案を彼女にした。
ひとりの女にみっともなく縋り付く自分、これが執着なのか恋なのかさえもうわからないでいた。
菜摘は自分を捨てて他の男を選んだ女なのに。あのとき賢哉に向けた嫉妬心はいまだに清貴の中にくすぶっている。今回菜摘と賢哉が一緒にいるのをまた目撃して、再度燃え上がった。
(いったい俺はいつからこんなやつになったんだ)
何もかもスマートにこなしてきた。もちろんそれなりに努力もしてきた。周りにはできないことはないのでは……とまで言われたことも一度や二度じゃない。
それなのに、菜摘に対してだけは、何もかもうまくいかない。
ただ言えることは、菜摘が誰かのモノでないなら、自分のモノにしたかった。欲望に忠実に彼女を手にしたかった。
たしかに両親に結婚を急かされている。しかしこんな状況のまま他の女性に目を向けることなんて到底できない。そうとなれば結婚相手は菜摘しか考えられない。
彼女にとっても悪い話ではないはずだ。
菜摘は父親の残した工場を大切にしていた。だからこそ跡を継いでくれた叔父や従兄弟が跡を継いでくれたことをものすごく感謝している。だからこそ和利が会社の金を使い込んでも、これまで許してやってきたのだろう。
しかしこのままでは倒産まっしぐらだ。そこに手をさしのべる会社は今のところいないだろう。あの社長さえいなければ、あの工場はもっと日の目を見るはずだ。彼女もそれを望むだろう。