エリート御曹司に愛で尽くされる懐妊政略婚~今宵、私はあなたのものになる~
 自分自身を納得させようとする。しかしそれらは結局すべていいわけなのだ。

 借金を肩代わりするために結婚を迫るなんて、そのうえ子供が欲しいというなど、まさに狂気の沙汰だ。

 しかい心の中にある菜摘への言葉にできない思いが、清貴を突き動かす。

(本当に俺は、ひどい男だな)

 そう思うけれど菜摘に対する思いを消すことはできない。

 そんな自分に呆れ、苦悶の表情を浮かべる。

「もう、賽は投げられたんだ」

 これから先どうなるのか、自分でさえわからなかった。しかし清貴自身の手で走り出したこの結婚話を彼は止めるつもりはなかった。

「菜摘……」

 呟いた彼の手のひらには、大切そうにあのしおりがのせられていた。

 
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