エリート御曹司に愛で尽くされる懐妊政略婚~今宵、私はあなたのものになる~
「必要ない。逃げるなよ、今さら」

 清貴の指が耳をくすぐる。ビクッと身体が震えてしまう。彼はそれを楽しんでいるようだ。

うっすらと浮かべた笑みの中に色気すら感じる。

「に、逃げないよ。だってそんなことしたら私が清貴と結婚した意味がなくなるじゃない」

 そのためにきたのだ。工場を助けてもらう代わりに、加美家の跡取りを産むこと。だからこの行為を拒むことができない。

 しかし菜摘のこの言葉を聞いた清貴の表情が鋭くなる。そしてさっきとは違う冷たい笑みを浮かべた。

「なるほど、覚悟はできてるってことだな。じゃあ、ぞんぶんに果たしてもらおうか、お前の役目を」

 言い終わらないうちに彼は菜摘の肩をポンっと押した。あそう強い力ではなったもののそのままベッドに倒れ込む。そして身動きできないように、彼が覆いかぶさって来た。

 覚悟はできているはずだったのに、いざこうなると途端に不安になる。

「んっ……はぁ」

 唇が重なる。最初から激しいキスに脳内がゆさぶられた。彼の熱い舌先が遠慮もなく唇を割って入ってくる。上顎を舐め、歯列をなぞりそして舌を絡めとる。

 キスしかしていないのに、体の芯がとけはじめるのを感じる。顎に伝うどちらかのものかわからない唾液を彼が舌先ですぐいとり、そのまま耳にかじりつく。

「ひっ……はぁ」

 悲鳴交じりの声に、清貴かは満足そうに息を漏らし笑う。

「心配するな、お前は忘れているかもしれないが、俺はちゃんと覚えている。どうやってお前を抱けばいいのかを――」

「あっ……」

 手のひらがカットソーの裾から侵入してくる。肌をすべる手の感覚に菜摘の体は素直に反応する。

 そんな様子を清貴は存分に楽しんでいた。

「たとえ、お前が義務だと思っていても、そんなこと忘れるくらいよくしてやる」

 カットソーをめくられ、背中に回された手が器用にホックを外す。締め付けが亡くなった瞬間豊かなふくらみに、彼がかじりついた。

「あぁぁ」

 思わず出た声に慌てる。口元に手を持っていきこれ以上声が出ないようにする。しかし清貴にはそれが気に入らなかったようだ。彼はその手をはぐと、菜摘の指先を自身の口にもっていき舐めた。

「いやぁ、やだぁ」

 見せつけるように舐められたのは指先のはずなのに、なぜこんなに恥ずかしいのか。しかし嫌だと言っても彼はやめようとしない。
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