エリート御曹司に愛で尽くされる懐妊政略婚~今宵、私はあなたのものになる~
「舐めてほしそうにしていたから、そうしただけだ」

「そ、そんなこと……ない……あぁ」

 否定している間も、彼は人差し指を口に含んだ。菜摘から甘い声が漏れる。

「そんな声で否定されても、納得できるはずがないだろう」

 うっすらと浮かべた笑みに、胸がドキンと大きな音をたてた。彼のひとつひとつの動きに翻弄される。

「いいから、もうあきらめろ」

 その言葉に、菜摘は彼に見せていた抵抗を投げ出した。彼の背中に手を回した。しっかりとした背中に男性をより意識して胸が高鳴った。

 彼女の反応を見た清貴は、鼻先を擦り合わせる。

「無理はさせない。だから俺にすべてゆだねてくれ」

 菜摘はゆっくりと頷いた。そこに不安などひとかけらもなかった。彼が自分を抱くときこういう目をしていたことを菜摘は知っている。

 そして清貴はその宣言通り、菜摘を丁寧にそれでいて情熱的に抱いた。

「菜摘……菜摘」

 熱のこもった吐息交じりの声。それを聞くと本当に愛されているのではないかと誤解してしまいそうになる。それくらい彼は菜摘を大切に扱った。

 そして菜摘は彼のその行為に素直に反応する。体の奥から沸き上がってくる波が何度となく彼女を襲う。そのたびに涙がこぼれるほどの快感に体も心も震えた。

 そのたびに清貴の存在を深いところで感じ、色々な感情はすべて流されて、今彼と抱き合っているという事実だけを受け止める。

「清貴……はぁ……もう」

「いい、何も考えるな」

 魔法のような彼の言葉が、菜摘の思考を奪い、ついには大きな快感の波にのまれた。

「……っ、菜摘」

 うめき声のような掠れた声で名前を呼ばれた後、清貴の体の重みを感じる。菜摘はそれを受け止めて、背中に回した手に力を込めた。

 互いにはぁはぁと肩で息をする。触れ合う肌は互いにしっとりと汗ばんでいて、興奮はまだ冷めておらず熱い体をくっつけていた。

 清貴が体を起こした。離れていくと思っていたものの、そのまま菜摘を抱えて抱き起した。互いに向かい合い、菜摘は彼の上の乗ったままだ。

 慌てて下りようとするが、清貴にがっつりと抱え込まれた。そして彼が深いキスをしかけてくる。

(う、うそ……)

「ん、……待って」

 首を振って情熱的なキスから逃げ出そうとする。しかし彼は菜摘の頭に手を添え、それを許さない。

「ダメだ、まだ離してやれない」
< 47 / 112 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop