エリート御曹司に愛で尽くされる懐妊政略婚~今宵、私はあなたのものになる~
 彼はどうやらもう一度、菜摘を抱くつもりのようだ。まさかこんなに初めから情熱的な夜になるとは思っていなかった菜摘は戸惑う。

「時間がないんだ。ほら、舌を出して」

 耳朶を舐め上げられながら注ぎこまれた言葉に、菜摘は素直に従うしかなかった。

 ふたりの長い夜は、菜摘が記憶を手放すまで続いた。



「んっ……」

 寝返りを打とうとした菜摘は、体が自由に動かないことに気が付いて目をあけた。

「おはよう。起きたのか?」

 目の前にいるのが清貴だと認識する前に、声がかかる。そこで初めて菜摘は昨日あのまま眠ってしまったのだと言うことに気がついた。

「あのまま眠ってしまったみたいで、ごめんなさい。邪魔じゃなかった?」

「これだけ広いんだ。問題ない」

 その言葉にほっとしたが、いつまでもここにいるわけにはいかない。時計を見ればまだ早い時間だったが、シャワーを浴びて出勤準備をしなくてはならない。

 しかし清貴はじっと菜摘を見つめたままだった。密着したまま眠っていたようで、互いに何も身に着けておらず素肌同志が触れ合っている。

 なかなかに刺激の強い朝だ。なるべく彼の方を見ないようにして、何か身に着けるものがないかキョロキョロと探す。

 するとそれに気が付いた清貴が立ち上がると、クローゼットからバスローブを取り出した。

「俺のだから大きいだろうけど、ないよりましだろ」

「ありがとう」

 受け取るとブランケットで体を隠しながら、体を起こし彼に背を向けながらバスローブを身に着けた。

「体の調子は? おかしくなったらすぐに病院に行こう」

「うん……わかった。シャワー先に使うね」

 そう言い残して寝室をあとにする。バタンと扉が閉まった瞬間に緊張がとけて「はぁ」と大きく息を吐いた。

 昨日は勢いもあったうえに、途中からは清貴に翻弄されて夢中になった。そのせいで色々と考えることをやめてしまっていたので、今になって羞恥心に襲われた。

 頭の中に浮かんでくる光景に、頬を染めながらバスルームに向かう。洗ってあるバスローブなのに彼の匂いがするような気がするのはどうしてだろうか。

 早足でたどり着き、バスローブを脱いだ。大きな鏡に映った自分の姿を見て目を見開く。

「な……なにこれ」

 大きな声を出すと彼に聞こえてしまうかも、そう思い声は小さかったが我慢できなかった。 
< 48 / 112 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop