エリート御曹司に愛で尽くされる懐妊政略婚~今宵、私はあなたのものになる~
「そんな、そんなこと言われたらもうどうしようもないじゃない。どんな努力もできない」
澪は泣きながら部屋を出て行った。
清貴は頭を抱えながら、ソファに座った。
彼女がいなくなった本当の理由がわかった。子どもができないかもしれないと医師に言われ、それを相談もできずに清貴に浮気を疑われたのだ。その時の菜摘の気持ちを考えると胸が苦しくなる。
離婚届は昨日のうちに準備していたに違ない。それでももし清貴がちゃんと話を聞いていれば彼女は別れを思いとどまり今まだとなりにいたかもしれない。
「菜摘……菜摘……」
顔面蒼白でその場に立ち尽くす清貴。彼を育ててきた祥子でさえこんな息子の姿を見るのは初めて声をかけることすらできなかった。
ロックグラスの中の氷がとける間もなく、ボトルからなみなみとバーボンが注がれる。
そしてそれも一息に胃の中に流し込まれた。もちろん味わってなどいない、酔いさえすればそれでいいのだが、その酔いさえも今の清貴にはやってこなかった。
夜になっても菜摘とは連絡が取れない。彼女はスマートフォンを部屋に置いたままでていってしまっていた。派遣会社や派遣先の会社にはすでに辞意を伝えていたようで、明日以降出社の予定もないとのことだ。
年明けに結婚式を挙げる予定だった式場も、昨日の時点でキャンセルされていた。自分のプライドを守るために「跡取りが必要だから結婚しろ」と言ったことがどれほど彼女を苦しめたのか今頃になって思い知る。
病院で検査結果を知ったときの菜摘の気持ちを思うと、胸がかきむしられるほどの思いだ。
今、人を使って探させているが駅でみかけたという目撃情報を最後に足取りは途絶えている。どんな手を使ってでもいいから探し出せと指示しているにもかかわらず、情報が入ってこずに焦る。
警察に届け出ることも考えたが、大袈裟にすれば彼女がもどってきづらいという加美家の両親の意見を飲み、行方不明者届を出すのはひかえた。
暗いリビングの中でひとりいると、昨日までのここがいかに彼女によって心地よい空間としてもたらされていたかということを思い知る。
特別何かをしなくても、ここに彼女がいるという事実だけで、清貴の心は満たされていたのだ。
【大切なものは失くしてから気が付く】とはよく言ったものだ。
「菜摘、いったいどこにいるんだ。頼むから出てきてくれ」
澪は泣きながら部屋を出て行った。
清貴は頭を抱えながら、ソファに座った。
彼女がいなくなった本当の理由がわかった。子どもができないかもしれないと医師に言われ、それを相談もできずに清貴に浮気を疑われたのだ。その時の菜摘の気持ちを考えると胸が苦しくなる。
離婚届は昨日のうちに準備していたに違ない。それでももし清貴がちゃんと話を聞いていれば彼女は別れを思いとどまり今まだとなりにいたかもしれない。
「菜摘……菜摘……」
顔面蒼白でその場に立ち尽くす清貴。彼を育ててきた祥子でさえこんな息子の姿を見るのは初めて声をかけることすらできなかった。
ロックグラスの中の氷がとける間もなく、ボトルからなみなみとバーボンが注がれる。
そしてそれも一息に胃の中に流し込まれた。もちろん味わってなどいない、酔いさえすればそれでいいのだが、その酔いさえも今の清貴にはやってこなかった。
夜になっても菜摘とは連絡が取れない。彼女はスマートフォンを部屋に置いたままでていってしまっていた。派遣会社や派遣先の会社にはすでに辞意を伝えていたようで、明日以降出社の予定もないとのことだ。
年明けに結婚式を挙げる予定だった式場も、昨日の時点でキャンセルされていた。自分のプライドを守るために「跡取りが必要だから結婚しろ」と言ったことがどれほど彼女を苦しめたのか今頃になって思い知る。
病院で検査結果を知ったときの菜摘の気持ちを思うと、胸がかきむしられるほどの思いだ。
今、人を使って探させているが駅でみかけたという目撃情報を最後に足取りは途絶えている。どんな手を使ってでもいいから探し出せと指示しているにもかかわらず、情報が入ってこずに焦る。
警察に届け出ることも考えたが、大袈裟にすれば彼女がもどってきづらいという加美家の両親の意見を飲み、行方不明者届を出すのはひかえた。
暗いリビングの中でひとりいると、昨日までのここがいかに彼女によって心地よい空間としてもたらされていたかということを思い知る。
特別何かをしなくても、ここに彼女がいるという事実だけで、清貴の心は満たされていたのだ。
【大切なものは失くしてから気が付く】とはよく言ったものだ。
「菜摘、いったいどこにいるんだ。頼むから出てきてくれ」