23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜

第5章 王子様の忘れられない人

「はい、承知致しました。北沢に伝えておきます」

私は、朝から出ずっぱりで居ない千歳の空席を見ながら、受話器を置いた。

今日も、企画営業第一課は、慌ただしい。

特にアウトレット建設の件で、連日、颯も千歳もほとんど会社には居ない。

ーーーーそして、あの日、颯に抱かれそうになってから、あっという間に2週間が経っていた。あの日の翌日、颯は、申し訳なさそうな顔で、私に謝罪の言葉を口にしていた。

『昨日はごめん。もうしないから、俺の側に居て。あと、美弥に本気だって、思ってもらえるまで、何もしないから』　

その言葉通り、颯は、キスはおろか、身体に触れることもなく、手さえも繋がなくなった。

それ以外は、相変わらず意地悪をしたり、揶揄ったりと颯との暮らしは、変わらなかったが、私の心の中のモヤモヤは、膨らんでいく一方だった。

ーーーー颯に触れられたくて。

一瞬とはいえ、颯にベッドの上で抱かれそうになり、颯の温もりをしった身体は、寂しささえも感じてしまう。

私は、颯が好きなのに。どうしようもない程に颯しか見ていないのに。

いつか颯に話そう。

ちゃんと気持ちを伝えたい。

そう思いながらも、いざ、颯を目の前にすると、素直に気持ちを打ち明けられないまま、時だけが過ぎていた。