23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜
「美弥ちゃん?どしたの?」 

「あ、ううん、何でもない」

私は慌てて、目の前のパソコン画面に視線を落とした。

「美弥ちゃん、仕事、慣れてきたみたいだね」 

「うん、少しだけだけど」

「充分だよ、さすが元々キッチンメーカーで働いてただけあるよ」

麻美が、カタログを捲りながら、コーヒーを持ち上げた。

「ありがとう」

私を眺めながら、麻美がニコリと微笑みながら、ブルーベリーの飴をコロンと置く。

「美弥ちゃん、今日の歓迎会楽しみだね」

「あ、うん、忙しいのに、何だか申し訳ないけど……」 

今朝、いきなり、うちのグループメンバーに千歳から、私の歓迎会をする旨のメールが届いていて驚いた。

「言い出しっぺの課長も来ると思うし、たまには、いいじゃん。美弥ちゃんが来てくれて、本当に助かってるんだから」

「麻美ちゃん、有難う」

麻美が、首を振りながら、ブルーベリーの飴を頬張ると、カロンと転がした。

千歳に抱きしめられてから、2週間経つが、二人きりで会ったのは、結局あの1回だけだった。

そして、颯とも、この2週間、辛うじて、朝ご飯だけは、一緒に食べて出勤しているが、颯も会食や打ち合わせで、千歳同様かなり忙しそうで、いつも先に寝てしまう私は、颯が、いつ帰ってきてベッドに入ったのかも分からない。

そんな、すれ違いの日々が、続いていた。
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