23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜
電子カタログをクリックしていると、丁度メールが入る。

ーーーー颯からだ。

『悪い、今日は、飯いらないから。昨日のオムライスも美味かった』

私は思わず、ふっと笑った。

一人分だけ、作る食事は作り気が起こらないし、何より、颯に少しでも栄養のあるものを食べて欲しくて、夜ご飯は、自分のと一緒に必ず作ってダイニングに置いておくのだ。

朝起きて、颯が、食べてくれた後の空っぽの器を見るたびに嬉しくなる、私のささやかなルーティンになっていた。 

(颯、今日は、夜ご飯要らないのか……) 

一人だと途端に、作る気が起こらなくなるし、今日の夜は、歓迎会だ。丁度、良かったのかもしれない。

『分かった。お仕事無理しないでね』

(会いたい……)

颯と毎朝会えるとはいっても、その時間は短くて、幸せの魔法は、いつも一瞬で()けて、消えてしまう。

本当は、もっと颯と一緒に居たい。

『鈴なくすなよ』

再度送られてきた、颯からのメールを見ながら、鞄から少しだけ見えている、颯の家のマスターカードを見つめた。わざわざ端に穴が開けてあって、鈴がつけられている。 

(これじゃ、まるで颯の猫だ)

本当は、鈴だけじゃなくて、何処にも行かないように、颯のモノだという、首輪をつけて欲しいなんて言ったら、颯は、何ていうだろう。

意地悪な顔をして、それでも最後は、優しく私に触れて、私の心が何処にもいかないように、見えない鎖で繋いでくれるのだろうか。
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