23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜
水道の蛇口を捻り、石鹸を泡立てて手を洗う。

頭の中は、泡立つ白い泡と共に、さっきの麻美の言葉で、あっという間に不安で、埋め尽くされる。

私は、頭の中の不安を掻き消すように、石鹸を洗い落とすと、手を拭きながら、自然と鏡に引き寄せられるように、自身の映った顔を見た。

見慣れた大きな黒目に、長い黒髪、小さな背の低い鼻、どうみても、誰もが、振り返る王子様のような颯には、不似合いだと改めて思う。

「何?颯の隣にいる顔じゃないって分かった?」

ふいに鏡には、ベージュの髪を、今日は巻いて下ろしている実花子が映り込む。

「あ……」

「もうすぐ、颯との暮らしも3週間?かしら?」

黙ったままの私を見下ろしながら、実花子が、髪を掻き上げ、念入りに化粧直しを始める。

「もうすぐね、颯がアンタに飽きるのも。てゆうか、千歳から聞いたけど、幼なじみなんだってね」 

「え……?」

アイライナーで、ラインを引き直し、ファンデーションのスポンジを頬と鼻筋の通った鼻に当てながら、目だけで実花子が、私を見た。
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