23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜
「千歳とは、同期だから。聞いたわ、千歳も物好きね、アンタと付き合いたいなんて」

「……千歳、くんが……そう言ってたんですか?」

ピンクベージュの口紅をネイルの施された指先で回し、形のよい唇に、色付けながら、実花子が、馬鹿にしたように笑った。

「千歳が、はっきりと、そう言った訳じゃないけど、颯とアンタの事、聞かれたから、雰囲気で分かったけど」

ーーーー私は、千歳にもあれから、なんの返事もしていない。正直、幼なじみのお兄ちゃんとしてとしか見たことがなかったから。

「私、今晩、颯にヨリ戻したいって話すつもり」 

言葉が、急に出てこなくなる。実花子と颯がヨリを戻す?

「何その顔?何度も言うけど、颯が、本気になるなんて信じないことね。千歳にも言われたでしょ?颯は、女なんて抱けたらいいの」


ーーーーそんなことない。

颯は、だってまだ一度も私を抱いてない。強引に抱かれそうになったけど、ちゃんと、私の気持ちが固まるのを待って我慢してくれた。  

今だって、私の事を大切にして、身体目当てじゃないから、私に指一本触れないまま、一緒に暮らしてくれてるんじゃないだろうか?

「そんな……ことないです。颯は、ちゃんと、私を見て……くれてるから。大切にしてくれてます」

実花子の美しい顔は、眉間に皺がより、怒りで歪んでいく。
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