23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜
第2章 王子様のお試し婚約者
「ふぅ……」

あのあと、颯の10畳程もあるバスルームに驚いて口が開きながら、シャワーを済ませて、同じく、だだっ広い洗面所で、颯が、用意してくれた真新しい化粧道具でお化粧を済ませた。

そして、タグが切られたばかりの、紺色のワンピースに袖を通す。

「わ、ぴったり」

着丈やウエスト周りまでまるで、計ったかのように身体に馴染む。

『おれ、女の体型みたら、大体のサイズ分かんだよね』

ワンピースを私に渡しながら、意地悪く唇を引き上げた颯の顔が頭をよぎった。

(一体何人の女の子を連れ込んでいるんだろう……)

見たこともないような、美しい装飾の施された目の前の大きな鏡に自分の姿映す。

「婚約者……」

颯に押されて、つい了承してしまったが、どう考えても私と颯じゃ、不釣り合いだ。

安堂不動産といえば、誰もが名を知る大手不動産会社だ。株式一部上場は勿論、資本金は、三千億、従業員は3千をこえ、全国に支店及び関連グループ会社の数は、1000を超える。

土地や建物の売買は、勿論、近年では、郊外の大型アウトレット施設の建設や、高所得者向けの完全オーダーメイドのマイホームを実現できる、『カスタムできるマイホーム』を売りに、売上は近年で、3倍ほどに膨れ上がっていると、以前勤めていたキッチンメーカーの講習会で聞いたのを思い出した。

派遣契約を切られた、キッチンメーカーの主力商品である、『エターナルキッチン』は、主婦目線で、節水効果のある水栓、防カビ素材を使用したシンクを基本搭載している。

さらには、アクセントパネルを追加料金無しで数百を超えるデザインの中から選択できる、一生モノのキッチンを売りにしているとあって、納期は、半年以上先まで常に埋まっている状態だった。

その納品先に、勿論安堂不動産も含まれていた。
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