溺れるくらいの恋を…君に
冬臣と別れ、自宅マンションに帰った水瀬。

百合愛に電話をかけた。
しかし、繋がらない。

「まだ、仕事とか?」
しかし、時間は22時を過ぎている。

「…んなわけねぇか。
風呂?トイレ?
━━━━━まさか!俺以外の男と会ってる!?
……って、それはねぇか!(笑)」

一人でぶつぶつ言っていると、折り返しの電話がかかってきた。


「もしもし!?百合愛!?」
『水瀬くん、ごめんね!気づかなくて』

「ううん!」
『どうしたの?』

「どうかしないと電話かけちゃダメなの?」

『え?あ、そうだよね!
ごめんね、なんか慣れなくて……』

「ううん。百合愛の声聞きたくてかけた。
本当は、今からでも会いてぇんだけど……
もう遅いしな!
明日が休みだったら、会いに行くのにな」
『フフ…そうだね』

水瀬は、通話をしていて違和感を感じる。
「………つか!なんか、百合愛の周り騒がしくね?」

『え?あ、今、家に帰ってるから。
ごめんね、うるさいよね?』
「は?今?
なんで?」

『ん?あ、じゅ…あ、違う!
友達と食事した帰りなの』
「は?だったら、俺に連絡しろよ!
迎えに行くよ?
こんな夜遅くに危ねぇじゃん」

『え?あ、ご、ごめんね』
「……ったく…今どこ?」
『あ、もうすぐ家に着くから、大丈夫だよ!』
「ほんとに?
俺に遠慮とかすんなよ?」
『うん』

「じゃあ、帰り着くまで電話しよ?」
『うん』

「百合愛、明日会える?」
『え?あ、ご、ごめん。
明日は……』

「じゃあ、明後日」
『あ…明後日も……』

「は?じゃあ、いつなら会えんの?」
『今週末なら。
ごめんね。
大切な用があるの』

「ふーん」
明らかに機嫌が悪くなっている。
百合愛は、相手の顔を窺うクセがある。
一路と交際して身についた。

その為か、声だけでもなんとなく相手の機嫌がわかるのだ。

『あ、あの!水瀬くん!』
「ん?」

『ごめんなさい!』
「…………大丈夫!」

『え?』
「俺は、元彼と違う」

『水瀬くん…』
「まぁ、ショックではあるけど……
大事な用なら、我慢する!」

『あ、そ、それでね!』
「うん」

『こ、こ…』
「ん?」
『今週末!と、泊まりに行ってもいいかな?』

「………」
『………』

「………」
『……え?水瀬くん?』
(ま、まさか!退いてる…!?
ど、どうしよう……)


「百合愛、わかってるんだよな?」
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