溺れるくらいの恋を…君に
「………あの、山城さん」
「ん?」

「いつも、ありがとうございます!」
ペコッと頭を下げる。

「え?」

「山城さんが背中を押してくれるから、私頑張れます!」
微笑み言う百合愛。

冬臣は、胸のキュンとした痛みを感じていた。
「………」

「山城さん?」
「あのさ!」
「はい」

「冬臣って呼んで?」

「え?あ、はい。
えーと…冬臣くん…」

「……//////」
名前を呼ばれるだけで、ドキドキしてする。

「えーと…
私、行きますね!
ほんと、ありがとうございました!」
そう言って水瀬の方に行こうとする百合愛。

冬臣は思わず、手を掴んでしまう。

「え?」
「え?」

固まる百合愛。
そして、当の冬臣も固まっていた。

(な、なんで!?
なんで俺、引き留めてんの!?
なんで、こんな地味な女にドキドキしてんの!?
なんで!?
なんで!?
なんで!?)

「あの、山城さん…手…」

「冬臣!
そう呼んでっつったじゃん!」
「あ、はい!冬臣くん」

ムキになることないのに、何故か凄まじい嫉妬心みたいなものが、冬臣の中にふつふつと湧いていた。

「ねぇ、このままどっか行こうか?」

「え……冗談…」
「本気だよ」

「でも私、水瀬くんの……」

「わかってるっつうの!!」
突然冬臣が声を荒らげ、百合愛がビクッと怯える。

「あ…ご、ごめん!!ごめんな!!」
百合愛の様子に、我に返った冬臣はバッと手を離し謝罪を繰り返す。


「━━━━━百合愛!!」
そこへ、水瀬が駆けつけてくる。

「百合愛?どうした?」
「あ…みな…く…」
上手く声が出ない百合愛に、水瀬は抱き締め背中をさする。

「大丈夫!大丈夫、ゆっくり深呼吸して?
━━━━━━冬臣。お前、百合愛に何した?」
百合愛を抱き締めたまま、冬臣を見据える。

「手、握っただけ。
自分でもよくわからない。
つい、デカイ声が出た。わりぃ…」

「お前……まさか…!」
「え?」

「あ、いや…
とにかく、俺達もう帰るから」
「あぁ…」

「百合愛、もう帰ろ?
後は、マンションでゆっくりしような!」
水瀬の言葉に、百合愛はゆっくり頷いたのだった。

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