溺れるくらいの恋を…君に
そして、一ヶ月後━━━━━━

百合愛は同窓会会場である、ホテルにいた。

会場内に入り、なんとなく一路を探す。
まだ来ていないようだ。

友人の話では、出席すると聞いていた。
遅れてくるのだろうか。


「百合愛!」
「あ、久しぶり!」

友人が、声をかけてきた。

「百合愛、綺麗になったね!」
「そ、そうかな?////」
「うん!綺麗!」

「ありがとう!」
嬉しそうに微笑む。

「百合愛、一路と別れてからどうしてた?」
友人が、窺うように聞いてくる。

「あ、今年の夏に恋人ができたの。
その彼はとっても素敵な人で……だから、幸せ!」

「そっかぁ!良かった!
今度、紹介してよ!」
「もちろん!
今日、終わったら迎えに来てくれるからその時にでも」


すると、会場に一路が入ってきた。

一路はすぐに百合愛を見つけると、真っ直ぐ近づいてきた。
「百合愛」

「え?あ、一路くん」

「久しぶり」

「うん」

「お前、本当に“あの”百合愛?」

「え?うん。堺戸 百合愛だよ」
百合愛は、淡々と一路の問いに答える。

「別人みたいだな」

「え?」

「ビクつかないし、真っ直ぐ俺を見るところも変わった」

そう言えば、そうだ。
一路と付き合っていた時の百合愛は、常にビクビクしていて、いつも一路の顔色を窺っていた。

しかも話をする時も、こんな淡々と話すなんてもっての他だった。


百合愛自身もびっくりだが、完全に一路に対して感情が冷めていた。

だからか、とても冷静に対応できていたのだ。


(これも、水瀬くんのおかげだなぁー)
と、心の中で微笑んでいた。

(あー、水瀬くんに会いたいなぁ~
………楽しみだなー、今日一ヶ月振りに会えるの)

百合愛が悶々と、水瀬への愛しい想いを巡らせていると、不意に手を掴まれた。


「え………」

「百合愛、二人で抜けない?」

一路が手を掴み、耳打ちしてきたのだ。
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