Never Forget You
「ただいま」

玄関が開くと同時にそーちゃんの声が聞こえる。

私は目を覚ました。



お店を出て、実家に睦海を迎えに行って、いつものように夕食を準備して睦海に食べさせてお風呂に入って寝かせたら。

私まで寝ていた。

「おかえり…」

体を起こすとそーちゃんは寝室に入ってきて

「いいよ、寝てて」

そう言ってお風呂に入る準備を始める。

「うん、大丈夫だから」

私は起き上がるとキッチンに向かった。



「これ、美味しいね」

「睦海も全部、食べてくれたの」

そーちゃんが夕食を食べる時間が唯一、私達がじっくりと話を出来る時間だ。

去年はとことん、追い込まれていたので夕食の時間も慌ただしかったけど。

今年はまだ余裕がある。

多分、そーちゃんが焦る気持ちを抑えてるんだと思うけど。

「お腹は大丈夫?」

「うん」

三つ子なら、多少は異変がありそうなのに。

睦海の時よりも悪阻はないし、何より自分自身も落ち着いていた。

「そう、良かった。
でも、無理しないでよ。
特にサーキットでは」

食べ終わったそーちゃんは立ち上がると私の額を人差し指で突いた。

「私がするから」

食器をキッチンに持って行こうとするそーちゃんを止めようと立ち上がったけど。

「ゆっくりしていなさい」

座るように手で指示をされて私は再び座る。



キッチンから洗い物をする音が聞こえる。

こういう時、そーちゃんには悪いな、と思うのと同時に何ともいえない幸せが込み上げてくる。
< 117 / 163 >

この作品をシェア

pagetop