Never Forget You
「げ!いきなり行くか」

スタート直後。

祥太郎くんが叫んだ。



つい先日のレースでそーちゃんは普通に勝てないと思ったらしく、いつもなら様子を見て走るところで勝負に出た。

最初の第一コーナーで、自分がマシンを扱えるギリギリのラインでアクセルを開けた。

「晴れならいいけど…」

祥太郎くんの顔が引きつっている。

「雨であんなに開けるってアホか?」

その回答を至さんがした。

「そーちゃん、昔は雨の日が嫌いだったんだけど、ある時、突然コツを掴んだんだ。
あの程度まではそーちゃんなら大丈夫だよ。
…確かあれはむっちゃんが生まれた日かな」



私は至さんの言葉にハッ、とした。

そう。

あの日にそーちゃんは。

このクラスで初優勝したんだった。



「このスタートが成功すれば」

至さんは私を見て微笑んだ。

「そーちゃんは勝つよ、このレース」
< 130 / 163 >

この作品をシェア

pagetop