Never Forget You
お義父さんも。

ライダーではないけれど、部品等の製造メーカーの社長で。

またチームのスポンサーだから、レースは何度も見ているから。

そして何より。

そーちゃんの一番最初のファンだから。

そう言ったんだろうな。



「うん、そうだね」

そーちゃんは少しだけ笑って頷いた。

「しかし、早いものだな。

5歳からバイクに乗り始めてもう27年か。
まさか全日本でトップ争いをするなんて思ってもみなかったけど」

お義父さんはそーちゃんを見て優しく微笑む。

「次で最後かと思うと本当に寂しいけれど、これもまた人生だな」

お義父さんは寂しそうに微笑んだ。

本当は続けて欲しいのだと思うけど、お義父さんもわかっている。

そーちゃんの性格を。

「うん、そうだね…」

そーちゃんも切なく笑う。



「賢司くん、最後のレース、見る事が出来たらいいんだけどな」



お義父さんが呟いた言葉は賢司さんを知るすべての人の願いだろう。

どうか。

少しでも体調が良くなりますように…
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