Never Forget You
今シーズン最後のレースまであと1週間。

私は一人で病院に行った。



賢司さんは今、頑張って体力をつける為に食事を出来るだけきちんと摂るようにしているらしくて。

何としてでもレースを見よう、その執念が垣間見える。

「真由ちゃん…」

病室に入ると弱々しいながらも私の名前を呼んでくれた。

「こんにちは!」

出来るだけ、笑ってみせる。

本当は、泣きたい。

賢司さんの、こんな弱々しい姿を見ると。

あと何日、一緒にいる事が出来るのだろうと思う。

「どうですか?」

私は椅子に腰かける。

「…うん、一応外泊の許可は取ったから。
そーの、最後のレースは行くから。
楽しみにしてるって言っといて」

私は笑って頷く。



「真由ちゃん、お腹の子供達は?」

「今日、検診に行きました。
三つ子にしてはすべての子供が順調らしいです」

「そう、良かった」

賢司さんはホッとした様子でゆっくりと私から視線を外して天井を見つめた。

「楽しみなんだよ。
あの、総一の子供だよ?」

賢司さんは苦笑い。

私も苦笑い。

「あいつ…一生子供を作らないって思ってたから。
本当に良かった」

賢司さんはホッとした様子だった。
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