Never Forget You
「お前、やる気ないなら最初からリタイアしろ!!」

私はビクッ、として隣にいた睦海の手を握りしめた。

睦海も固まっている。

家では絶対に見せない姿だった。

「そんなんじゃ、至とか他のみんなに迷惑だし、見に来てくれたお客さんにも失礼。
何より、自分が一番納得しないだろ!!!」

周りはみんな、そーちゃんと祥太郎くんを息を潜めて見つめていた。

「次までにそんな状態なら…
俺は次から250に出ないから!!」

そーちゃんはそう言うと足早にその場から立ち去った。



「パパ!!」



睦海が泣きそうになってそーちゃんを追い掛ける。

私もその後を追い掛けた…けど。

人込みの中で上手く追い掛けられない。



「あっ…」

人にぶつかって睦海が倒れた。

慌てて行こうとしたら、そーちゃんが泣きわめく睦海を振り返って駆け寄り、当たった人に頭を下げていた。

そして抱き上げるそーちゃんの顔は…

辛そうで苦しんでいた。

後ろに来ていた私に気付くと

『来るな』

と、ジェスチャーされて。

それ以上は追い掛けられなかった。
< 77 / 163 >

この作品をシェア

pagetop